「いらっしゃいま…」


顔を上げた私は固まった。
高居先生だ。
また来たし。


「ありがとうございました」


「まだなにも言ってねえし、買ってもねえ」


「ありがとうございました!!」


噛んで含めるように言い放つ。


「椰原さん??」


心配して近づいた石山店長に、


「お構い無く。ストーカーで警察呼んでも構いませんよ」


「ちょっと待て!!」


腕を捕まれるけれど、冷たく振り払う。


人の気も知らないで。
いや、人の気??いやいやいや。こんな男に心を許した覚えはない。もう二度と許さない。


なにが隠し子だ。
なにが嫁だ。
なにが結婚だ。


「椰原さん…なにがあったのか知らないけど、話くらい聞いてあげても」


「聞きません。時間の無駄です」


ふん、とそっぽを向くと、レジの脇に届いたばかりの段ボールから商品を出して補充する。