「椰原さん!!紙、紙!!」


ぼんやりしていた私は、コピー機の枚数ボタンを間違って押してしまった。


止めに来てくれたのは、新入社員の布勢暉(フセ ヒカル)くんだ。


傍で探し物をしていたところだった。


私、椰原果奈(ヤハラ カナ)の勤め先、[bicycle]は、地域では大手の自転車店だ。


1枚でいいところを、100枚と押していたらしく、さくさくと要らないコピーが溢れ出す。


「ああっ!!ごめん!!」


「何やってるんですか、もう」


―――先月、


告白してきた布勢くんは、大卒で、半年間の社員研修の真っ只中。


一見チャラそうに見える色白で細身の彼は、実は細マッチョで、制服である作業着の半袖から覗く腕は引き締まっていた。


学生時代染めていたと思われる茶髪の名残が、髪の生え際に少しある。


おそらく就職で、どうせ黒だしと自分で染めたのだろう。