俺はその日、桃に呼び出された。
「…久しぶり。元気だった?」
「おう、久しぶりやな。元気やったで。」
ぎこちなく話す俺たちの姿は
まるで出会ったばかりの
小さい頃の2人を思い出させる。
そして、そこは
昔よく2人で来ていた
思い出の喫茶店。
あの頃と変わらない店内と
懐かしい香り。
そして
目の前にはあの頃と変わらない
不器用だけど、愛嬌のある
桃の笑顔があった。
「急に呼び出してどうしたん…?」
「……実はね、私……結婚するの。」
そう桃が呟いた瞬間
俺と桃の間にはなんとも言えない
静かな時間が流れた。
もちろん
桃が結婚することは
なんとなく気づいていた。
桃と離れてしまってからも
おばさんからと母親からは
桃の話を間接的に聞かされていたし
あれから月日も経っている。
結婚という形になるのは
必然なんだろう…。
だけど
今の俺は桃へ
祝福の言葉を贈ることなど
できるわけが無かった…。
「…やめろや…結婚なんか。」
「えっ…?」
そのとき、俺の頭の中には
あのときの光景が浮かぶ。

