俺はそのまま桃を抱き寄せ
キスをした。



「…っ!!!ちょっ…やめてよっ!」



ーバシンっ!!



桃は慌てて俺の体を突き飛ばし
すかさず俺の頬を平手打ち。



「…っ最低…。」



そう言う桃の瞳からは涙が溢れ
その真っ直ぐな瞳には
呆然と立ちすくむ俺が写っていた。



「…シゲだけは……っ、シゲだけには…そんなこと…して欲しくなかった…。」



「…ごめん。」



「もう…シゲなんて大嫌い…っ。…顔も…見たくない…。」



そう言って
桃は泣きながら走り去って行った。



…………。



今すぐに桃を追いかけて
桃を捕まえて
必死に謝れば
もしかしたら桃は許してくれるかもしれない。



だけど
今の俺にはできなかった。



遠くなる桃の背中をただただ見つめ
すくんだ足を恨むことしかできない俺は
本当にどうしようも無いバカだ。



桃の言う通り俺は最低だ…。



気持ちすら伝えられないくせに
こんなやり方で
大事な桃を傷つけた。



ずっと一緒に歩いてきた
このかけがえの無い関係を
俺は自らの手で壊したんだ。



せっかく
本当の気持ちを
桃が気づかせてくれたのに
俺は何をやっているんだろう…。