「ちょ、ちょっと!シゲ!ねぇ!痛いってば!」



桃のいつもの声に
俺はハッとして
桃の手をそっと離した。



「ご、ごめん…。」



「…シゲ、急にどうしちゃったの?」



「あ、いや…花火に間に合わんとみんな心配するやろ。」



「そっか、そうだよね。ごめんね、何も考えないで話し込んじゃって…。」



桃は
さっきまでの表情とは違って
少し悲しそうに微笑んでいた。




「……。」



「……。」



お互いなんとなく気まずくなって
無言のまま
家族の待つ場所へと向かって
ゆっくりと歩き出した。



「…なぁ、桃?」



「ん?」



「お前さっきの人のこと好きなん?」



「へっ?!な、な、何言ってんの?!」



ほら、やっぱり…。



また俺には見せないその表情。



桃は昔からわかりやすい。



「お前…さっきの人となんかあったやろ?」



「ちょっと、急に何言ってんの?!」



「隠しても無駄や。お前と何年一緒におると思っとんねん。」