「おはよっ、シゲ!お待たせしましたぁ〜っ。」



玄関のドアを勢いよく開け
飛び出してきた一人の女の子。



「おう、行けるか?」



俺、棚倉重人(たなぐら しげと)と
新川 桃(あらかわ もも)は
幼稚園からの付き合い。



4、5歳ぐらいのときに
俺んちの隣に引っ越してきた桃は
小さくてぷくぷくしていて
すごく愛嬌があったのを
今でも覚えている。



だけど
そんな桃は
家族や知り合いがいないところでは
極度の人見知りで
仲良くなるまでには時間がかかった。



毎日毎日
桃んちに通って
公園に誘ったり
一緒にゲームしたりと
少しずつだけど
桃との距離を縮めていった。



そして、今。



桃と俺は家族のように
毎日ずっと一緒にいる。



だけど
そこに特別な感情なんてなかった。



……はずだったのに。



俺はまだ
気づいていなかったんだ…。



この胸の奥の痛みに…。