きみと最後の1ページまで






「もうすぐ夏休みだよ! デートにでも誘っちゃえばー?」

「それいいね!」

「ち、ちょっと、勝手に話進めないでよ」




そんなんじゃないから、と否定すればするほど誤解が深まって行くようだった。


彩奈は他人の恋愛模様が大好きなので、今まで全くそういう話が無かった私をからかっているんだと思う。


全く、どうしたものかな。




「そういう千夏は、どうなのよ? 先輩と何か進展あった?」




彩奈はにやにや顔を崩さずに、今度は千夏の話を聞き出した。


先輩とは、野球部の二年生前野翔悟(まえのしょうご)先輩のことで、千夏の好きな人。


千夏も元々は彩奈とテニス部に入る予定だったのだが、前野先輩に一目惚れした勢いでとにかく大変だと噂される野球部のマネージャーになったほどだ。




「へへ、実はこの前先輩がねぇ……」




顔を赤らめ、照れながらもとっても嬉しそうに先輩とのエピソードを語る千夏は正に恋する乙女って感じがする。


そう、これが本来の恋をしてる女の子の姿。


私は高木くんの話をしながらこんな表情はできないし、やっぱり好きとかそういうのじゃない。


と、思った。