「でも、すごいね。もうみんなの名前覚えたの?」
「いや、覚えてない」
「そうなの?」
「仲良くしてくれてる奴以外は、まだちょっとな」
「へぇー。じゃあ私の名前も当てずっぽうだったり?」
私が冗談っぽく言えば、高木くんは「違うから」と笑った。
「名前、綺麗だと思ったんだ」
「え、私の?」
「ああ。星の川が遥かに香る……って、なんとなく綺麗じゃん」
「あ……」
確かに私の名前は”星川遥香”。
まさか、フルネームを覚えてくれてるなんて予想外すぎて固まってしまった。
それに、名前を褒められたことなんて初めてだった。
「あれ? やっぱり俺、気持ち悪いな……」
「そんなことない! ごめんね、ちょっと驚いただけ。嬉しいよ!」
高木くんは「そっか、よかった」とため息混じりに呟くと、分かれ道で歩みを止めた。



