上履きからローファーへ履き替えて、今朝さしてきた傘を手に取るのは同時くらいだった。
「お、雨やんでるね」
外に出て空を見上げると、まだ厚い雲が広がっているものの、雨粒は一滴も落ちてこなかった。
隣の高木くんも一緒に上を向き「ああ、よかったな」と少し微笑んだ。
「で、それは」
「しつこいなぁ」
校門を抜けてからも尚ノートについて聞いてくる私に、高木くんは呆れたようすで眼鏡をあげる。
それから、短く息を吐いて観念したようにやっと答えてくれた。
「これは……調べたこととか、思いついたことを書いておくためのノート。ネタ帳みたいなもん」
「ネタ帳? 何のために?」
「俺、小説書いてんの」
小説? って、あの活字がずらっと並んだ本?
いや、それ以外知らないけど。



