「優しいね、高木くん」
「ははっ、別に」
高木くんは笑いながら例のノートをカバンに入れると、「ありがとな」と言って階段に向かって歩き出す。
その後ろ姿を見て、もうひとつの興味がわきだした。
私は高木くんに小走りで近付く。
「ねぇ、高木くん」
「まだなにか?」
「それ、何のノートなの?」
興味とは、またノートのことだった。
聞いた瞬間自分でもちょっとうざいなと思ってしまったが、気になるものは気になった。
「大したものじゃないって言ったろ?」
「でも、気になる」
「あー、そう」
「おしえて?」
「いや、だから……」
こんな感じで私の疑問は濁されつつ、気付けば下駄箱までたどり着いていた。



