私は結構平然を装ったつもりだったが、高木くんは下がった眼鏡を押し上げながら言った。
「ああ、見たか」
表情は変わらないものの、声はワントーン低く聞こえた。
やばい、怒った? 嫌われた?
でも、それも当然だ。
勝手に私物を覗き見るなんてロクでもない奴に決まってる。
「ごめん! 本当にごめん!」
私は全力で頭を下げて謝る。
急に大きな声を出されたからか、高木くんはビクッとして一歩後ろに下がった。
それを無視して私は続ける。
「あ、あのね、ちょっと気になっちゃって。最低だよね。ごめんなさい」
「は、はぁ」
「で、でも! 書いてあることは正直よくわからなかった。他人に見られちゃまずいものだった……よね?」
「あ、いや、これは……」
高木くんは言葉を少し詰まらせたが、ふっと笑って私に向き直った。
「大丈夫。全然平気。だから気にすんな」
「ほ、本当に?」
「本当。大したものじゃないし」
高木くんの柔らかい表情とその一言を聞いて、一気に全身の力が抜けたのがわかった。



