茅野さんの家から少し離れた所に
小さな公園がある

公園と言っても遊具は滑り台とブランコ
円形の砂場らしき場所

そしてベンチが1つ

ここはあたしが茅野さんに告った公園だ
そこで今茅野さんはそのベンチに座って
泣いている
泣かせたのはあたしだ

今日は茅野さんとデートに行くため
友達の片瀬さんを誘って服を買いに行った

地元の駅から一駅の大型モール
ここなら服も買えるし食事も出来る

そこであたしは新谷さんとレポートをしに
来ていた茅野さんとトイレでバッタリ会う

で、いきなり別れて欲しいと言われた

あたしは唐突過ぎて意味がわからず
わかりましたと答えた

で振られたのにも関わらず4人で食事をして
家の方向が一緒なので2人で帰ってきている

片瀬さん達と別れた後
茅野さんが泣き始めてしまったので
電車に乗せる事も出来ずに
一駅分を2人で歩いた


茅野さんは落ち着いてきたのか
しゃくり上げる頻度が少なくなってきた

ごめん‥

いえ、大丈夫です

辺りはもうすっかり暗くなってる
いくら家が近いからって
1人にする訳にもいかない

でまた茅野さんは黙り込む

‥あたしが何かしたんですよね?
だから別れたいって思ったんでしょ?

違う!涼が悪い訳ではないの!
茅野さんは顔を上げて否定する

あたしはそのまま顔を押さえる

じゃあなに??
ちゃんと話してくんなきゃわかんないでしょ?

〈ああ、また泣く‥

茅野さんが別れようと決断した理由
今日レポートを仕上げるためにカフェに
いたら、あたしと片瀬さんが腕を組んで
歩いていた
そして楽しそうに服を選んでいた
まるでデートしてるみたいで
自分以外の誰かがあたしに触れるのが
許せなかった
こんな気持ちを知られたら嫌われると思った
だから本性がバレる前に別れようと思った
そしたら今まで通り普通の先輩と後輩に
戻れると思った、だそうだ


で、やっぱりあたしが悪かった

今、気持ちは無くても相手は片瀬さんだ
茅野さんはあたしが片瀬さんを好きだったと
知っている 自分が話した事だ
だから誤解されたって仕方ない

本当にごめんなさい!!


違うよ!あたしが悪いの!
お願いだから謝らないで!


‥でも何もなかった事にするのは無理です

えっ?

戻れる訳ないです

目を丸くして
茅野さんはあたしを見つめる

こんな気持ちのまま‥茅野さんを
先輩だなんて思えないんです

泣きそうだった
今頃になって言われた時の顔が浮かぶ

こんな時でも彼女に触れたいと思うあたしと
自分以外の誰にも触れさせたくないと思う
茅野さんはどっちが醜くて汚いのか

というか、付き合ってるなら
こんな感情普通じゃないのか
それはそんなにいけない事なのか

〈好きだからじゃだめなのかな‥?

‥涼?

‥されるの‥嫌ですか?

‥嫌‥じゃない‥

あたしも別れたくないです

‥うん

最初からこうすればよかった

一回じゃおさまらない
ずっと触れていたかった

相手に触れる事で思いが伝わればいいのに

人と本気で向き合う事がこんなに難しいなんて
思いもしなかった