明日は部活が休みだ
そして明日は茅野さんとデートだ

でもあたしには着ていく服がない
あとデートって何をするのかわからない

ってな訳であたしは中学時代からの友達の
片瀬さんと買い物にきていた

片瀬さんには彼氏がいるので
デートとかどこにいくのか
聞いてみようと思っていた

片瀬さんには彼氏がいる
彼氏はあたしの部活の男子部の先輩

中1の頃からだから、もう3年は付き合っていて
なのにいつも話すのは先輩の事ばかり

あたしは中学に入学した時片瀬さんが
好きだった
でもその思いは結構あっさりと終わって
気が付けば、誰よりも仲のいい友達になってた
だからこんな風に腕を組まれても
なんとも思わない

むしろこれが茅野さんだったら
キュン死に確定してるところだ

〈同じ女の子なのに全然違うよな?

だから片瀬さんなら相談しやすいと思って
今日付き合ってもらう事にしたんだ

なのに

片瀬さんと明日着ていく服を選んでいる時
茅野さんからLINEがきた

ごめん用事が出来たので
明日行けなくなりました

だってさ

さっきまで幸せモードだったのに
いきなり地獄に落とされた気分だった

そんな気分で服なんか選べるはずもなく
結局片瀬さんの買い物に付き合って
ご飯を食べる事となった

本当に何も買わなくてよかったの?

うん‥ごめんね
せっかく付き合ってもらったのに

いや私はいいんだけどさ
収穫あったし♪

そう言って片瀬さんは両手に持った
紙袋をあげた

ご飯どこで食べる?

ん〜私はどこでもいいよ!
涼ちゃんはなに食べたい?
つかすごい混んでるねー

夏休みのせいと夕ご飯の時間のせいで
お店はどこも満席で並んでいる状態だった

どうせ並ぶのなら一緒だと
すぐ近くにあった洋食屋に入る事にする

店の前に置かれたウェイテング表に
名前を書いて外の椅子に座る

つか涼ちゃんさー
好きな人いるでしょ?
つかもう付き合ったりしてる?

いきなりの片瀬さんの指摘にあたしは
びっくりして携帯を落としそうになった

な、なんでわかるの?

あ、やっぱりー?w
そうじゃないかな〜って思ったもん!

あたしそんな話してないよね??

だって涼ちゃんから誘ってくるなんて
初めてじゃない?
相談したい事があるとか
しかも服買いに行きたいなんてさ
だからもしかして?って思ったの!

‥すごい‥探偵みたい

やだ!何それ?w
で、付き合ってるの?w

‥うん、付き合ってる

まぢかーw
おめでとう、涼ちゃん!

うん、ありがと!

つい勢いで付き合ってると言ってしまったけど
あたしが付き合ってるのは片瀬さんみたいに
男の人じゃない
あたしは女の子と付き合っている

〈どうやって説明すればいいんだろ‥

相手が女の子だということを隠して
相談に乗ってもらう方法を頭の中で考える

あたしは別に悪いことをしてる訳ではない
普通に好きだから付き合ってるのに
なぜ隠さないといけないんだろう
なぜ秘密じゃないとダメなんだろう

茅野さんからもLINEは返ってこない

明日がダメでも次の休みにと思って
返信をしたのに
既得すらついていない状態だった

〈レポート大変なのかな?
電話したらダメかな?

片瀬さんごめん、ちょっとトイレ行っていい?

うんいいよ!もうすぐだから
先入っとくね!

うん、わかった

あたしは携帯で茅野さんの番号を出す
トイレに入って電話をしようとした


あっ‥

電話をしようとしたまさかの本人が
トイレの洗面台にいた
奇跡かと思った

〈茅野さん達も来てたのか

レポート終わったんですか?

‥うん
ここならレポートも出来るし
ご飯も食べれると思って‥

あたしも今‥

‥うん知ってる
片瀬さんとでしょ?
さっき見かけたから

ああ、そうなんですか?

〈なんだろ‥元気ないみたいだけど‥
つか見てたんなら声かけてくれたら
よかったのに

仲いいね‥
凄く楽しそうだった

そうですか?
〈つか、全然目合わせてくれないんだけど

あのさ‥

はい

‥別れてくれない?

はっ??

〈‥なに急に?

悪いけど、別れてほしいの‥

〈なんで??なんだそれ??なんで??

‥‥わかりました、いいですよ

〈なんで?なんで?!

‥‥‥うん‥ごめんね

そう言って茅野さんはトイレから出ていった

なぜ自分でも了承したのかわからない

でもそれは自然に出た言葉だった
あたしはいきなり振られてしまった

〈しかもトイレって‥

いきなり過ぎて涙も出ない
理由を聞きたいはずなのに
その言葉は出なかった

意外にあっさり終わるもんなんだと思った
つか自分自体があっさり受け取り過ぎて
びっくりしている
それともあたしの頭がついていけないだけか?
今のは茅野さんの偽物なのか?

〈そんな訳ないっつーの!笑えるわ‥

片瀬さんに相談に乗って貰おうしてた
はずなのに全く持って無意味な時間に
なってしまった

なんだろうこれ
後になってくるパターンなのかなーと
考えながら店にむかう
つか、あたしはとことん運が悪いみたいで


〈なんでなの?普通はこんな時こんな事にならないはずだろ?あたしはさっき振られたんだぞ


トイレから戻ると片瀬さんはもう店の中に
入っていた

しかもなぜか、新谷さんと茅野さんと
一緒のテーブルに座っている

あっ!涼ちゃん!こっちだよ〜♪

にこやかに手を振る片瀬さんが
悪魔に見えてくる

〈いやいやこっちじゃないから‥

‥先輩、こんばんわ

無視する訳にもいかないので挨拶はした

は〜い♪こんばんわ〜
新谷さんは相変わらず笑顔で答える

茅野さんからは無視された

〈挨拶は基本じゃないのか?

店の中入ったらね〜りっちゃんがいたの!
だから一緒に食べよーってなったんだ♪

りっちゃんは新谷さんの事

‥新谷さんと仲良かったの?

うん、マネージャーやってる時に
色々教えてもらったって話してたでしょ?

‥そうだっけ?

涼ちゃん私の話あんまり聞いてないもん!
片瀬さんは頬膨らませて怒る

‥ごめん

〈つか、なんであたしの隣が茅野さんなの?
普通そこは片瀬さんじゃないの

涼ちゃん何食べる?

何でもいいよ、適当に選んで

横に座れたおかげで顔は見なくてすんだ
これはこれでよかったのかもしれない

片瀬さんが頼んでくれたメニューが
運ばれてくる

さっきまであんなに歩きまわって
お腹が減っていたのに
今は全然美味しそうに見えない

片瀬さんが新谷さんと喋ってくれてるおかげで
自分が発言しなくていい状態になってた

時折振られる話に適当に相槌を打つ

茅野さんはいつもと変わらない感じで
新谷さんと茅野さんと喋っていた

凄くむかついた
あまりにも普通過ぎてむかついた

で、片瀬さんは空気を読まずに話しだす

で、涼ちゃんどうなの?

‥なにが?
あたしは食後のアイスコーヒーを飲みながら
片瀬さんを見た

なにが?って涼ちゃんの相談で今日来たのに
もう忘れたの!?

忘れてた
つか終わったから忘れてた

だ、あ、いやもういいよ!!

なんで?せっかくだから先輩達にも
聞いてもらいなよ!

〈いやいや何言ってんだよ!やめてよ!

なになに?wなんの話?w

新谷さんはあたしの方へ身を乗り出す

涼ちゃんの付き合ってる人の話ですよ♪

えー??まぢで??w
新谷さんの目が輝く

今日もね‥

そう言って片瀬さんはなぜここに来たのか
2人に説明し始める

あたしは一刻も早くこの場から
消え去りたかった

で?涼ちゃん、誰なの??

いや、もういいよ、

なんで?じゃあ誰とか言わなくてもいいから
どんな感じか教えてよ!

あ、それは聞きたいな〜!

新谷さんがなぜ片瀬さんと仲良くなれたのか
わかった気がした

律、やめなよ
嫌がってるんだから

茅野さんがあたしを庇う

〈そりゃそうだ自分が振った相手だしな

さっき振られた

えっ?
片瀬さんと新谷さんがハモる

振られたの!だから終わり!

さっきって?
片瀬さんが聞いてくる

トイレ行った時だよ!

LINEがきたの?

〈女子トイレで面と向かって言われたんだ
頼むから、そんな憐れみな目で見ないで

そう、別れてくれない?って

真山さんはなんて返したの?

新谷さんも聞いてくる

はい、わかりましたって返しましたけど?

なんで!?理由聞いてないの?!
片瀬さんの声が大きくなる

うん‥聞いてない
つかもういいから!

いやいやちょっと待って!
真山さんその人の事好きじゃなかったの??

いや、好きですよ

‥じゃあなんでOKするの??

いや、別れてと言われたからですけと‥

違うよ!!涼ちゃん!
なんで理由聞かないの??
好きなんでしょ??

〈そーだよ!大好きだよ!らしくもなく
服を買いに来たりするほど好きなんだよ

相手が理由言わなかったんで
聞かなかっただけです
つか、もう本当にいいんで勘弁してください!
すいません!

あたしはテーブルに頭を下げた

みんなが今どんな顔してるかなんて
わからない
つかもう終わったんだし
あたしには関係ない

なのに

なんなの?その手は?
本当に意味がわからない

食事が終わって新谷さんにお金を渡す
新谷さんがまとめて会計をしてくれてる間
あたしと片瀬さんと茅野さんは外に出て待つ

片瀬さんが店のサンプルケースを見てる時

あたしは茅野さんに服の裾を引っ張られてた

〈なんなんだよ、くそ!!

意味がわからない
なんで言葉にしてくれないんだ
あたしだって理由を聞きたいよ
でも言わないんだ
なら聞けないよ
ちゃんと言われなきゃわからない
好きじゃないならあたしに触れないで


こういう時に運が悪い事は続くんだ
片瀬さんと新谷さんは帰る方向がおなじ

あたしと茅野さんも帰る方向が同じ
となると
必然的に一緒に帰る事になってしまうわけ

〈あたしには恋愛の神様とかいないんだろな

いつもなら、茅野さんが前を歩いて
で、あたしが少し後ろを歩いて追いつく
そんな感じで歩いてた

なのに今日に限って茅野さんは後ろにいる

まぁその方がいいのかも
あたしの家は茅野さんの家を過ぎたところに
ある訳だし
このまま顔を見ないで帰れるし

自分から振ったくせに
自分から別れてくれって言ったくせ

〈なんで泣いてるんだ、泣きたいのは
あたしの方じゃないのか?

すぐ後ろで泣いてる人を
いくら振られたからって
ほっといておけるほど
あたしは薄情にはなれなかった

足を止めて振り返る

こういう時なんて言葉をかけたらいいんだろ?
大丈夫ですか?なぜあなたが泣いてるのですか

あたしはポケットからハンドタオルを
出して茅野さんに差し出す

顔を上げてくれないから気づいてもらえない

強引に顔を上げさせて涙を拭く
なんでこんなに好きなんだろう
茅野さんの泣き顔に胸がしめつけられる

あたしはいつのまにか茅野さんを抱きしめてた
別に見られたって構わない
女同士なんだからいくらでも言い訳は出来る

まぁでもこのままでいる訳にも行かないので
手を取って近くの公園へと向かった

〈いい加減泣き止んでくれないかな〜

ベンチに座っても茅野さんは泣いたままだった
とりあえず1人分空けてあたしもベンチに座る

〈まぁひどい事したもんな〜
振られた話なんてしなきゃよかった

‥ごめん

また謝られた
あなたの事を振ったくせにあたしが泣いて
ごめんなさいってとこなのかな

大丈夫ですよー
もう気にしてないんで

‥違うの‥

何がですか?

‥別れたくないの‥

はぁ??

先輩に向かってそんな口の聞き方なんて
した事はない、でも今は致し方ない

‥何それ?

敬語を使えないのも許して欲しい
今はそんな気分じゃない