長かった合宿が終わった
学校についてすぐにあたしは律と
合宿についてのレポートを仕上げるために
後で落ち合う事にした

涼とは家の方向が一緒なので
2人で歩きながら家に帰る
こんな風に当たり前に帰れる事さえ
あたしには嬉しくて仕方ない

合宿帰りだから荷物はたんまりあるし
こっちに着いた途端、山の中とは違って
本当に蒸し暑くて嫌になるのに

涼が隣にいるというだけで
家までの距離がもっと長ければなんて
思ってしまう


レポートですか?

うん、顧問が読みたいんだって!

相変わらず変な人ですね‥

うーんまぁ、他の部と違って口出してこないし
自由にやらせて貰えるから
レポートぐらいなら全然平気かな?

そんな話をしているともう家に着いてしまう
一週間も一緒に同じ屋根の下で生活しても
2人になれたのなんて結局あの日だけだった

今、涼に触れたくてもこの両手に抱えた荷物が
邪魔するし、まずこんな所じゃ無理だし

じゃあ明日ですね?

そう、明日がある
明日は部活が休みで

うん

家着いたらLINEしますね
お疲れ様です

そういって涼は背中を向けて歩いていく

好きに重さがあるのだとしたら
間違いなくあたしの方が重いはず

荷物を放り出して追いかけて行きたくなる
その背中だけでもいいから触れたくなる

でも今は我慢が出来る
なんせ明日は涼とデートするんだから
明日は一日中一緒にいれるんだから

デートの事を言い出したのは涼だった
1on1であたしに勝ったご褒美がデートだなんて
本当に可愛いくて仕方がない

そんなのあたしにだってご褒美になるのに
でもよくよく考えたら
あたしはデートをした事がない
服は?髪は?つかデートって何するの?

とりあえず部屋に荷物を放りなげて
シャワーを浴びる
レポートを早く終わらせて
律に買い物に着いてきて貰おうと考えた


あたしと涼はお互いが初めて付き合う同士
2人ともずっと部活をしてきたから
環境は似ていて、考える事も一緒なのだろう
だからこれは仕方ないってわかってる

律と2人で大型のショッピングセンターに行く

ここならレポートをする場所もあるし
買い物も食事も済ます事が出来る

そう思ってここに来たのに
やっぱり考える事は一緒なのだろうか

あたしは今は1番会いたくて仕方ない人が
腕を組まれながら歩く姿を見てしまう

あたしの視線の先にいたのは
片瀬さんに腕を組まれながら歩く涼の姿だった

見間違える訳がない

あたし達のいるカフェから見える店で
涼と片瀬さんは笑顔で服を選んでる

多分明日のデートで着る服を選んでいるはず
そんな事ぐらいはわかってる

なら涼は明日片瀬さんに選んでもらった服を
着てあたしとデートする訳だ

別にそれは構わない
あたしだってこのレポートが終われば
律と買い物に行って服を選ぶし
律が見つけてくれた服が気にいったら
それを明日着ていくかもしれない

〈でもなんで片瀬さんなの?

片瀬さんは涼があたしを好きになる前に
好きだった子
とても小さくて可愛いくて女の子らしくて
髪の毛なんかもクルクルでオシャレな子

片瀬さんには彼氏がいてその付き合っている
彼氏はあたしと目の前にいる律と幼馴染で
白石太一という

太一と片瀬さんが付き合う時
間に入ったのがあたしと涼だった

あたしは幼馴染の太一から相談されて
涼がその片瀬さんと同じクラスだったため

涼と仲良くなりたい一心で太一に協力した

涼が太一に協力したのも片瀬さんと
仲良くしたいためだったと後から聞いた
その時の涼は片瀬さんの事が好きだった

もう何年も前の話だし今付き合っているのは
あたしな訳だし、こんな風に考えるのは
間違っているとわかってる

でもあんな風に2人で仲良く服を選んで
笑いあって、ふざけあって、腕まで組んで

あれじゃまるで‥デートみたいだ


こんなドロドロした感情は知らなかった
嫉妬、独占欲、傲慢、あたしは本当に
嫌な奴すぎて自分が嫌いになる

やっぱりあたしには恋愛なんて無理なんだ

あたしは他の誰にも涼に触れてほしくない
涼はあたしだけのものだ
涼に触れていいのは付き合っている
あたしだけなのに

こんなに我儘で心が汚い女は涼には似合わない
きっと涼もこんなあたしを知れば
嫌いになるに決まってる
涼とは好きの重さが違うから

あたしは携帯を取り出し用事が出来たと
ウソをついてデートのキャンセルをする

こんな気持ちで涼のそばにいれる訳がない
あたしの本性がバレる前に終わりしたい
ズルい奴だと思われても嫌われるよりか
ずっとマシだから
そうすれば先輩と後輩として一緒にいれる