今日は夏休みに入ってから初めて
部活が休みになった
明日から合宿が始まるという事で
顧問の計らいでミーティングだけとなる
まぁ自分が早く帰りたかっただけだろうけど

学校から出て歩いていると
ポケットの中で携帯が鳴る

電話の相手は茅野さんだった

はいもしもし?

‥涼、今どこ?

あ、今帰る途中ですけど

‥は?‥なんで?

えっ?

そのままいきなり電話は切られた
全く意味がわからずあたしは携帯を
見ながら立ち尽くす

〈部活休みだって言ってたよね?
いや、顧問がそう言っただけで
実は自主練するとか?
だとしたらクソヤバいんだけど

急に不安になったあたしは学校へと引き返す
門が近くなってきた所で
前から茅野さんが歩いてくる

〈あれ?やっぱり休みなの?

茅野さんは顔を上げてあたしに気づいた

あっ!

しかし声が聞こえない距離でもないし
目が合ったはずなのに
茅野さんはそのまま横を通り過ぎて行く

〈何これ‥無視された?

あたしは振り返る事が出来ずに
そのまま固まってしまう
〈‥なんで?

こないだ茅野さんと新谷さんに
呼び出されてスタイルを変えるように
言われた事を思い出す

〈あれだけじゃダメだって事?

今まで怒られる事はあっても
こんな風に無視をされる事はなかった

頭の中で原因を探していると
急に後ろから手を取られる

そしてそのまま引っ張られながら歩く
そんな態度に少し腹が立ってくる

‥なんで怒ってるんですか?

‥別に怒ってない

じゃあなんで無視するんですか?

茅野さんは立ち止まる
あたしはそのまま茅野さんの
前に回った

ちゃんと言ってくれないとわからないです

彼女は下を向いたまま答えない

‥また無視ですか?

その言葉に茅野さんは顔を上げる
その顔は今にも泣き出しそうだった

えっ?

〈いや、なんで?

‥なんで連絡くれないの?

えっ?なんの連絡ですか?

‥やっぱりいい
茅野さんはまた歩き出そうとする

いやいやよくないですよ!
ちょっと待ってください!

あたしは慌てて茅野さんの腕を掴む

‥付き合ってるんだよね?

へ?あ、はい

じゃあなんでLINEも電話もくれないの?

えっ?

付き合ってから全く連絡取ってないよ

あっ‥

確かに言われたらそうだ
というか次の日から部活が始まって
毎日顔を合わせてるので
あたしは勝手にそれで満足していて
家に帰っても御飯食べて風呂入ったら
すぐに寝てしまっていた


‥今日だって、せっかく休みになったのに
何も言わないで帰っちゃうし‥

節目がちに茅野さんは言う

あたしは部活だけじゃなくて
恋愛にも向いていなかったみたいだ

‥すいません

ううん、無視してごめん
あたしの思ってる付き合う事と
涼の思ってる事は違うのかも‥

そう言ってあたしに笑いかけるが
笑顔は下手くそだった


あたしは想いを伝える事が出来て
満足していたのか
部活で顔を見れていたから安心していたのか
つかそもそも付き合うってなんだ
茅野さんの思ってる付き合いって?
あたしは茅野さんと何がしたいんだろう?

〈なんか終わりっぽい言い方だな‥
このまま別れちゃうのかな

すいません、あたし付き合うの初めてで
あんま良くわかってなくて‥
部活で毎日顔見てるし、なんかそれだけで
勝手に満足してました!すいません!

あたしはめいいっぱい頭を下げた

あ、ごめん!あたしの方こそ
子供っぽくってごめんね!
その姿に茅野さんは慌てる

‥あたしの家来ます?
顔だけを上げて茅野さんに聞く

えっ?

まだ来た事ないですよね?

あ、うん

本当は遊びに行きたいところですけど
明日から合宿だから無茶するとダメなんで
あたしの家でゆっくりしますか?

茅野さんは少し俯いて考える

‥ダメですか?

えっ?違う!ダメじゃない!

よかった!

‥でも、一回着替えたいんだけど‥

はい、大丈夫です!
家の前で待ってますから!

‥うん!

〈よかった!機嫌なおったみたい

じゃあちょっと待っててね

そう言って茅野さんはマンションの中に
入っていった
あたしは携帯のゲームをしながら
茅野さんを待つ
30分ぐらい待った所で茅野さんは
出てくる

初めて見た茅野さんの私服に
あたしはまたお花畑が見えた

〈茅野さんがスカート履いてる!

‥‥可愛いですね

‥あ、ありがとう
そのまま2人で歩き家に着く

あたしの家は一軒家の2階建てで
部屋は2階にある

本当に近いんだね?

はい5分もかからないでしょ?w

今日は両親が大学でバスケ部の
コーチ要請がかかったために
家にはいなかった
誰か連れてくるたびに構いだすので
あたしとしてはいない方が気が楽だった


どうぞ!

お邪魔します

2階に上がって茅野さんを部屋に入れる

飲みもの入れてくるので
ベットにでも座ってて下さい

うん、ありがと

あたしは階段を降りてキッチンに向かう

〈自分の家に茅野さんがいるなんて
変な感じだな‥つか私服クッソ可愛いんだけど

自分の部屋に入る前に顔を戻す

茅野さんは部屋の中をキョロキョロ見回す

‥なんか太一の部屋みたい

あ〜白石さんと仲良いんですよね

テーブルに飲みものを置いて聞く

茅野さんあたしに言われた通り
ベットに腰掛けている

うん幼馴染なの!あたしの住んでる
マンションに太一も住んでたから

そうなんですね!
あたしは着替えるために制服を脱ぐ

茅野さんはあたしの着替えを凝視する

‥いつも思うけど、凄い腹筋だね‥

そうですかね?
あたしは自分のお腹を触りながら
茅野さんを見る

うん!凄いよ!腕とかも凄い締まってるし

自分ではなんとも思わないですけど‥

Tシャツに着替えてテーブル挟んで床に座る

部屋の中見ていい?

いいですよ
なんもないですけど

茅野さんはベットから立ち上がり
本棚の前に立つ

アルバムとかないの?

中学のならそこの棚にありますよ

中学は知ってるもん
‥小学校の時とか

多分リビングに置いてるかも

ならいいや
バスケ雑誌ばっかりだね

茅野さんは見ないんですか?

うんあたしは見ないかなー

そうなんですね
今は帰ったら寝るだけなんで
読んでない号とかもあるんですけどね
親が購読してるんで勝手に増えていくんです

今日お母さん達は?

大学でバスケのコーチしに行ってます
多分その後飲みに行くだろうから
夜になんないと帰って来ないんです

‥そう

はい!だから気にしないでいいですよ

‥うん

〈ん?
どうかしました?

ううん!なんでもない!
茅野さんはそのままあたしの隣に座る

座布団ないから床じゃ痛いんで
ベットに座って下さい

‥ここでいい

体冷えますよ?

‥じゃあ涼もベットに来てよ

〈さっきからなんか変な感じ
まだ怒ってるのかな?

はい

あたしと茅野さんはベットに座り
壁に背をつける

‥今日はごめんね

あ、いえ、あたしが悪いんです
今日からちゃんと毎日LINEしますね

‥うん

明日から合宿ですね、高校の合宿は
どうなんですか?

死ぬよ!

ですよね‥

合宿は1日中で練習をするために
行く所なので普段の練習よりも
さらにハードになる

うん去年と同じ所だから
全員で雑魚寝だけどね

そこは中学と変わんないんですね?

うん‥一回隣同士で寝た事あったでしょ?


あーありましたね!あたしが2年の時ですよね?
そういえば2年の時は寝る場所も
ちゃんと決まってたからびっくりしたなー
あたしは壁際だったからよかったですけど

あたしが決めたの

そうなんですか?

涼の隣に誰も寝かせたくなかったから

へ?

ずるいでしょ?w
あたしはそういう事平気でしちゃうの
今回の鉄則だってそのためだもん

意外だった、あたしの中の茅野さんは
凄く真面目な人だったから
いつからそんな風に
あたしを好きでいてくれたんだろう?


ズルくないです、凄い嬉しいですよ

あたしは涼とこんな風になれるなんて
思ってもなかったから本当に今凄く
幸せなの!今涼の部屋にいるのも夢みたい

〈そりゃ不安にもなるよな
付き合えっていったくせに連絡すら
してこないんだから

自分の中では充分に茅野さんの事を
好きだと思っていた
でも茅野さんはそれ以上に自分の事を
見てくれていた訳で
そう思うと自分の好きが薄っぺらく感じた

〈好きだと思ったのも最近だしな‥

茅野さんの手があたしの手に触れる

あたしはその手を握り返す

茅野さんは誰かと付き合った事あるんですか?

ううん、ないよ!涼が初めて

涼は?

あたしもないですよ

‥涼は最初から女の子が好きなの?

‥そうですね、茅野さんは違うんですか?

うん、好きになったのは涼が初めてだから

〈まぢか‥あたしが初恋なんだ

別に聞かれてもいないし
わざわざ言う事でもないと思ったけど
なぜか隠しておくのはズルいと思った

あたしは茅野さんに今まで好きになった人と
なぜ茅野さんを好きになったのかを話した

茅野さんは真剣な表情で聞いていたと
思ったら、急にびっくりした顔になり
話の最後のほうはなぜか呆れていて
で、やっぱり少し怒っていた

じゃああたしを好きになったのって
最近なんだね?

〈なんかトゲがある言い方だな‥

はい‥

でもあたしといたいから
部活に入ったんだよね

そうです

茅野さんはそう言いながらあたしの懐へ入る

不純な動機だね‥

そう言ってあたしを見上げる
どうやらあたしはこの目には弱いみたいで‥

〈この前もこんな顔してたよな

あたしはもう茅野さんから目を
離せなくなっていた

付き合って初めてのデートと2回目のキスは
あたしの部屋のベッドの上でした