妖あやし、恋は難し


拳銃をもったまま個室内隅から隅まで見て回ったが彼女の居た痕跡はない。


ただ大きく開かれた窓があっただけ。

内側から覗くと、ちょうど裏路地にでれるようだった。

おそらくここから連れ出されたのだろう。


(くそっ、あの時ちゃんと見ていれば…!!!)


あいつが絡むといつも通りの動きができない。

普段ならこんなミス絶対にしないのに!!

歯がゆさから、きつく握りしめた拳を壁に叩きつけた。







一方その頃


「んんんーーーー!!!」

「大人しくしろガキが!!」


結は裏路地の人気が一切ない暗がりに連れ込まれていた。

口元を布で抑えられ声を出せない。

何とか暴れて逃れようとしているが、体格差や力の差が歴然で毛ほどの抵抗もできてない状況だ。

しばらくすると結の身体は固い床に放り出された。


正確には車の中。

「な、何を…!!貴方達誰なんですか!?」

後ろ手に縛られている状態で、結は果敢にも叫ぶ。

「俺達が誰だってあんたには関係ねえよ」

「そうだそうだ!ったくうぜえ番犬雇いやがって、おかげでテメエ拉致るのにこんなに時間がかかっちまった」

「…え?」


困惑する結。

その様子を見て、男たちはニヤニヤと笑う。


「おいおい、お前何にも知らないんだな。自分が置かれてる状況も、これまでどれだけ狙われていたかも、全然」

「可愛い成りしてとんでもない女だと思ってたが、兄貴、コイツただのガキですぜ?間違ったんじゃないですかい?」

「確かに…不安になってきたが、連日黒木組にいかつい男引き連れて通う女だぞ?間違っていたにしろ黒木組に関係ある女に違いねえ。誘拐には成功したんだ、脅迫もなんでもやり放題だぞ!」

「さっすが兄貴!!頭良いっすね!!!」


(な、何言ってるのこの人たち…誘拐?脅迫?黒木組が何?)


何も状況が分からない。

分からないけれど、

(ヤバい状況かも、これ…!!)

結は顔を真っ青にして、唇を噛みしめた。