たとえばモラルに反したとしても

 この瞳をもっと見ていたい。

 彼の甘い声も、意地悪な声も全部好き。
 優しいキスも、深いキスも、静かに触れる手も、強くつかむ手も、どれもこれも好きで堪らない。

 けれど始まりを間違えてしまっていた。

 三好は、命令しなければ桐華を見ない。
 命令しなければキスもしてくれない。
 手を上げて抱きしめることさえ、命令なしではしてくれない。
 何一つ桐華へ心を渡さない。
 決して、振り返ることなどないと、一線を引くような話し方で分かってしまう。

 今、三好の立てた膝の間に挟まれて抱きしめられている。
 誰もいない家の廊下で、三好が抱きしめてくれている。

 命令、してないのに……

 桐華が倒れる寸前で抱き留めてくれた。
 そして落ち着くまでそっと抱きしめてくれている。

 ――嬉しい……

 たったそれだけで嬉しいなんて。

「ねえ……今すぐ抱いて……」

 このまま滅茶苦茶になるほど抱いて欲しい。
 三好の手で、吐息で、全てを忘れてしまえるほど乱れてしまいたい。

 フッと軽く笑う三好の吐息に桐華は顔を上げた。