たとえばモラルに反したとしても

 息も出来ないから酸欠になってキンと耳鳴りがする。
 全身にイヤな汗が浮かんで一瞬辺りが真っ暗になった。

 崩れる――

 手をつこうとしたけれど、間に合わなかった。

 手酷く床にぶつかればいい。
 それが今の自分には似合いの倒れ方だ。

 そう思った瞬間、ガッと体を抱き留められた。

「宮野さん!?」

 驚いた三好の声がぼんやりと薄い膜の外から聞こえてくるみたいに、ぼわんとあやふやに聞こえる。

 もう一度名前を呼ばれたような気がしたけれど、桐華は激しい頭痛と吐き気に意識が朦朧としていた。

 浅い呼吸をくり返しながら、不思議な感覚になる。


 どうして……?
 どうして抱き留めてくれたの?


「お姫様、落ち着いた?」

 うっすらと瞼を持ち上げると、いくらか瞳を揺らしながら三好が覗き込んでくる。

 可愛い目。
 流れるような黒髪。
 胸が一杯になる。

 その時、唐突に桐華は気がついた。


 ――あたし……三好が……好きなんだ……