たとえばモラルに反したとしても

 三好は下僕。

 弱みを握っているのは桐華。

 別に軽蔑されたって嫌われたって構わないのに。

 気がつけば桐華は必死で言い募っていた。

「ち、違うの! 確かに弓弦が来たけれど……あたし、必死に抵抗した。押し倒されて服も無理矢理引きちぎられたけど、抵抗して部屋に逃げ込んだの」

 イヤイヤとぐずる幼子のように首を横にふる。

「何もない。弓弦とは何もないの。弓弦がいつ帰ったかも知らない。本当に、何も無かった。今までだって弓弦とはそんな関係なんかになったことない!」

 声が震えている。
 涙が溢れそう。
 堪えていないとしゃくり上げて大声で泣いてしまいそう。

 けれど三好は今まで聞いた事もないような冷たい声で桐華の気持ちを打ち砕いた。

「そう? でも僕が初めて来た日は、誰かとした後だったよね? だったらあの日は別の人? 誰でもいいんだ、お姫様は」

 ガラスの器が激しく砕け散ったような音が耳の中で聞こえた。

 欠片が飛び散って破片が桐華の全身に突き刺さる。
 全身から止めようのないほど血が溢れ出て行くような、そんな錯覚に桐華はグラリと傾(かし)ぐ。


 三好の方を見ることが出来ない。


 きっと汚らしい、触れるのもおぞましいと、そんな眼差しを向けている。