たとえばモラルに反したとしても

「……仕事は?」

「休み。だから一緒にメシでも食おうかと思って早めに来た」

「何時に?」

「う~ん、八時前くらい。電話したけど出なかったし勝手に来た」

 初めて見る年相応の格好。

 眼鏡を外して髪を適当に掻き上げて笑う姿は、スーツの時のような淫靡さはないけれど、桐華の胸の奥を締め付けるほど安堵感を抱かせた。

 年相応なのに少し幼く見える。
 それは纏う雰囲気がいたずらを企む少年のように見えるから。
 そんな三好の姿がひどく愛しく感じた。

 膝を立てて座っている三好の前にペタリと膝をつくと、おもむろに桐華は抱きついた。

 緊張の糸がプツリと切れる。
 そんな感じだった。

 ギュッと抱きつくと泣きたくなる。堪えていないと涙が喉をせり上がって溢れ出てしまいそう。
 三好の華奢な体に力の限りで抱きついた。

「お姫様、どうしましたか?」

 抱きついても抱き返してもくれない。
 それでも三好の体温が今はひたすら暖かくて今にも涙が出そう。

 しばらく桐華の抱きつくままにさせていた三好が、ポツリと問いかけた。

「誰が来てたの?」

「え……?」

 顔を上げた桐華に三好は少し困ったような笑みを見せてツイと桐華の胸元を指さした。