たとえばモラルに反したとしても

「……今はそんな気分じゃない。やめよう、アミ」

 圭祐の言葉が信じられないのか、アミは全ての動きを止めて圭祐の顔を見つめる。

 その言葉が我慢からでも怯えからでもなく、ただ平然といつもと変わらないところから出ていることに気がついたのか、アミは唖然としたままで呟いた。

「……どうして……? したくないの……?」

 信じられない、と大きな瞳が訴えている。
 ここまで来て拒絶されるなんて有り得ない、と眼差しが言っている。
 そんなアミの気持ちは充分に分かっていたけれど、圭祐は顔を背けたままでもう一度言った。

「悪い……今は……ムリ」

「じゃ、じゃあ……いつならいいの? アミたち、もう三ヶ月も付き合っているんだよ? どうして圭祐君はアミを抱こうとしないの?」

「悪い……」

 謝った途端にアミは思わぬほどの力で床に圭祐を押し倒した。

 不意を突かれた圭祐はあっさりと押し倒されて、馬乗りになっているアミに驚きの目を向ける。
 あちらこちらが痛んだけれど、それよりもアミの行動に呆然としていた。
 いきなり圭祐のシャツのボタンを外し始めて、続いてベルトも勝手に外した。

「アミっ! やめろ!」

 押し退けて起き上がろうとしたけれど、折れて固定されている片手は思うように動かず、お腹の上にアミが乗っているから起き上がることさえ難しい。

「アミ、やめろよ!」

「いやだ! 圭祐君、いつまで経ってもアミに触れてくれないもん! 大丈夫、アミが全部リードしてあげるから。圭祐君は心配しないで」

 ね、いいから、と言いながらアミは圭祐の胸にキスをする。

 背中にも腕にも肩にも腰にもたくさんの湿布が貼られて痛々しい圭祐の体を、ゆっくりと順番に舐めるようにキスを落としていくアミに、圭祐は唇を噛み締めて目と閉じた。

「……アミ……やめてくれ……」

 吐息の懇願が圭祐の唇から弱々しくこぼれ落ちた。