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「ごちそうさま。お姫様に奢られてしまいました」
甘えることに慣れた仕草で三好は支払いを終えた桐華にお礼を言った。
「別に、あたしが呼びつけたんだし」
「ではお礼にお姫様のご要望を何でもお聞きします。何がいい? おんぶして帰ろうか? お姫様抱っこは……自信ないなあ」
三好の言葉に桐華も笑う。
背もそれほど高くなくて、華奢な三好が桐華をお姫様抱っこなど出来そうもない。
当然のように桐華の家に戻ってきた三好をソファーに座らせて桐華は暖かいコーヒーを淹れた。
「ねえ、どうやって家に入ったの?」
「あはは、戸締まりはきちんとしましょうね。悪い狼が寝ている赤頭巾ちゃんを食べてしまうからね」
「……そっか、鍵も掛けずにいたんだ……」
「電話しても出ないし、メールも返ってこないから来てみたんだ。でも家も誰もいないみたいだし、帰ろうとしたんだけどね、鍵が開いてたから入ってみたんだ。泥棒みたいにね」
「……そう」
関心のないような返事をしながら、良かった、と内心でホッとする。
三好が、帰って行かなくて、良かったと思った。

