たとえばモラルに反したとしても



 気持ちが良い。


 髪を優しく撫でつけられて気持ちが良い。

 覚えていないけれど、これが母親の手の感覚?

 安心させてくれるような、ゆっくりとした手つき。
 まどろみの中で心地良くてうっとりとする。


 ゆっくりと瞼を持ち上げると、すぐ側に座って桐華の髪を撫でている人物がうっすらと闇の中に浮かんでいた。

 窓から射し込む僅かな外灯の灯り。


 だれ……?
 どうして部屋に……?


 けれど怖いと思わない。 

 優しい手が、安心さえ与えてくれるから。

 誰なのか確かめたくて身じろぎをしたら、すぐに小さなささやきが落ちてきた。


「起こしたかな? 眠り姫」


 クスッとからかうような笑い声。
 柔らかで甘い声。

 驚いて飛び起きた。


「おはよう、お姫様」


 起き上がった桐華を包み込むように抱きしめた。


「……三好」

 呆然と、まるで夢でも見ているかのように名前を呼んだ桐華に、三好はそっと額にキスを落とした。

「お目覚めは王子様のキス、でしょう?」

 またクスクスと笑う。