たとえばモラルに反したとしても

「合意なんかじゃ……絶対に……ない!」

 ボロボロと我慢していた涙が溢れ出した。

 言いたいことも聞きたいこともたくさんあるのに、一度堰を切った涙は溢れる一方で、嗚咽が混じって息をするのも苦しい。

「わあ、化粧が台無しになるよ」

 泣き出した桐華に苦笑して、三好はポケットからハンカチを取り出す。

「ホストたるもの、身だしなみもきちんとしてますからね。ちゃんと綺麗なハンカチだよ。使って」

 差し出された男物のハンカチを受け取って桐華は目元を押さえた。

「こんな所にいたらまた誰かに襲われるよ? 早く家に帰りなよ」

 まだヒックヒックと嗚咽を漏らす桐華の肩に無理やりカバンを掛けさせると、三好はまるでエスコートするように桐華の腰に手を回して公園から連れ出した。

 そして人工の灯りの溢れる通りまで連れ出すと、あっさりと手を放して笑った。

「じゃあこれで。仕事に戻るから。お気を付けてお姫様」

 あっけないほどクルリと背を向けて三好は駅とは反対側の方へと歩きだして、桐華を一切振り返ることもなかった。


 冷たいんだ……

(送ってくれないんだ……)


 少しだけでも期待していた自分が浅ましかった。