たとえばモラルに反したとしても

 リダイアルで弓弦を呼び出す。

 すぐに『宮!?』と慌てた声で弓弦が飛びつくように答えた。

『宮、さっきはごめん! 俺、おまえのこと怖がらせた。今、どこにいる? 頼む、話をさせて欲しい』

 必死に言い募る弓弦の声などすり抜けていく。
 
今は一秒でも早く家に戻って三好を引き留めないと。


 会いたい、会いたいの。
 三好に会って、また意地悪な腕で抱きしめて欲しいのに。


「弓弦、カバン返して」

 多分、声は抑揚の無い冷たい声だったかもしれない。

 気が急いていたから、弓弦がどう感じるかなんてことに気が回らなかった。

『宮……』

 絶句した弓弦に小さな苛立ちが生まれる。

 カバンだけを今すぐ返して欲しいの、と告げようと口を開いた瞬間、後ろから声を掛けられた。

「デリバリーサービスです」

 飛び上がるほど驚いて振り返った桐華は、全ての動きを止めて耳に当てていたスマホを取り落としそうになる。

「電話中ですか?」

 煌びやかなネオンを背中に背負って立っていたのは、ホスト姿の三好だった。

 手にはなぜか桐華のカバンが握られていた。

 驚いて声も出ない。


「電話、大丈夫?」

 ついと指さされて、桐華は通話途中だったこと思い出す。

 スマホの向こうで『宮? どうした?』と心配そうな声を上げている。