たとえばモラルに反したとしても

 ただカレカノになるとかそう言う面倒はイヤだと、弓弦には言ってきた。

 けれど最近は弓弦の気持ちが大きく傾いてきたことに気がついて、この曖昧なキスはやめた方がいいと感じ始めていた。

 でも……拒むほどイヤじゃないのに。

 さっきのは拒否反応。

 強く拒絶した。

 体が?
 気持ちが?

 またポケットの中でスマホが桐華を呼び出す。

 きらびやかな光の輪からぽっかりと抜け落ちたような小さな暗がりを作る公園で桐華は目を閉じる。

(きっと弓弦だ……)

 カバンを落としてきてしまった。
 定期も財布も鍵も全部入っているから、家にも帰れない。
 スマホがポケットに入っているだけ。

 こうして弓弦の着信を避けていても帰る術(すべ)がない。

 まだ気持ちは混乱状態だったけれど、出るしかないか、と桐華は大きく息を吐き出してスマホを取り出し、そして目を見ひらいた。


 着信は三好からだった。


「なんで……三好が?」


 この時間はもうホストの仕事に入っている時間だろうに。

 急いで耳に当てると、昨日と変わらぬ三好の声が『こんばんは』とおどけたように届いた。