たとえばモラルに反したとしても

 ドンと胸を叩かれて、彼女が逃げだそうとする。

「宮、逃がさないから」

「やめてよ、弓弦、やめて!」

「俺の気持ち、分かってんだろ? 逃げられると思ってんの?」

「ゆづ――っ!」

 まだ何か言おうとする桐華の唇を、黙らせるように塞ぐ。

 そのまま壁に押しつけて彼女の短いスカートの上から足をまさぐる。

「んんん!」

 一向に抜けない桐華の力に弓弦もムキになってグイグイと壁に押しつけた。


 背中を叩く桐華の手など、大したダメージにもならない。

 モラルなんて砕け散れ。

 手に入れるべきものの為には手段などどうでもいい。


 突き抜ける感情が弓弦の中で暴れていた。


「あ~、こんな所でダメだよぅ~。やるならちゃんとラブホでも行けばぁ?」


 いきなり背後から声を掛けられて弓弦は驚いて動きを止めた。

 その瞬間に桐華は素早く腕の隙間から逃げ出して走り出す。

 一目散に逃げ去った桐華は学校のカバンを落としたまま。

「あ~、ごめん、ごめん。逃げちゃったんだ、彼女」

 苦笑したその男の言葉に弓弦は我に返る。

「桐華!」

 動転してしまっていた弓弦は、落ちている桐華のカバンに気がつかないまま、慌てて桐華の後を追って駆け出した。

「彼女のカバン……って、もう行ってしまったよな、どうしよ、これ」

 ひょいと屈み込んだ男は、桐華が落として行ったカバンを拾い上げて「お?」と小さく声を上げた。