たとえばモラルに反したとしても

 言葉では言い表せない違和感の正体が分からなくてモヤモヤとしていたことを思いだしてゴクリと唾を飲み込んだ。

「……まさか……その男と、何かあったのか? まさか付き合うとか……」

 思わず声が大きくなって、自分で慌てて口を押さえた。


 まさか、と愕然とする。

 そんなことないと、自分の中で否定する。

 けれど目を逸らせたまま何も答えない桐華の萎れたような姿を見て、それが確信に変わっていく。
 そのくせ自分の確信など信じないと、体の奥底が抵抗をしている。

「……ごめん、弓弦……ごめん、弓弦は友達なのよ……」

 力なく謝る彼女を呆然と見下ろすことしかできなかった。


 弓弦の中で何かが弾けた。


 おもむろに、桐華を強く自分の方へと引き寄せる。

 きゃっ、と小さな悲鳴を上げた彼女を力任せに抱きしめて自分の腕を戒めにする。

 ここが街中の、どこかのビルの陰だとか、そんなことはどうでもよかった。 

 手に入らないはずはないって、思いと
 手に入らないんじゃないかって、恐れと
 誰かに奪われてしまうという、恐怖が

 全ての思考を停止させて、体の中にある衝動だけが弓弦を突き動かした。


 無理やりに唇を寄せた時、思わぬほどの抵抗を受ける。

 それでも華奢な彼女の唇を奪う事なんて簡単で、無理やりに乱暴なキスをした。