たとえばモラルに反したとしても

「……それって、男?」

 聞いた途端、弾かれたように顔を上げた桐華の目が見ひらかれていた。


 違う、なんて言っても信じない。

 表情がちゃんと告げている。

 男。それも深く関わりのある……。


 弓弦は思わず唇を噛み締めた。

 (否定してくれ。嘘でもいいから……)

 無意識に心の中で呟いている自分に、少しだけ動揺する。

 けれど桐華は視線を斜め下へと落とし、艶めく唇で残酷に告げた。

「……もし……そうだとしても……弓弦には関係ない……」

 ガッといきなり桐華の細い両腕をつかんで弓弦は自分の方へ向けさせた。

「関係なくなんかない! 宮は俺の気持ちを知ってるくせに!」

「……それでも……関係ない」

 言い切った言葉に苛立ちが湧き上がる。
 いや、怒りだろうか。

 簡単に関係ないだなんて言うその綺麗な唇が憎たらしい。

「なんで……! キスもしてるのに、俺には関係ないって言うのか!?」

 いくらか沈黙を落としてから、桐華は「手を放して」と静かに言った。


 逃がしたりしない。
 手を放してなんかやらない。


 衝動が弓弦の中で湧き上がる。

 握りしめたままの両腕を、更にギュッと強くつかむと、桐華は痛みに小さく眉を寄せた。