ゼノンに連れられて、アロイスは館へ戻った。怒りに任せ、大量の魔力を使用した影響で、立つ事もままならない。
「すまない」
「謝る事が出来るのであれば、あのような真似は二度とするな」
「すまない。どうしても、許せなかった。君がくれた鏡……あれを割った事が許せなかったんだ」
「あんなもの、幾らでもくれてやる」
「そう言う事じゃ、ないんだが……」
彼女は何かを言い掛けて、途中で、眠ってしまった。よほど負荷が掛かったらしい彼女の体に、回復の魔術を掛けたゼノンは、リリスに後を任せ、エーリヒの追跡へ戻っていく。
翌朝。次の日になっている事に仰天したアロイスは、急いで着替え……部屋を出ようとしたが。
「あいた!」
ドアを開いても、そこに見えない壁があり、外へ出られない。困惑した彼女がその壁を叩いていると、リリスがやって来た。
「おはようございます」
「リリス!一体これは何なんだ」
「ゼノン陛下のご命令です。王妃さまをここから出してはならないと仰せつかっております」
「何故だ?彼は一体、どんなつもりでこんな真似を……」
うろたえる彼女の背後に、ゼノンの気配が現れる。
「我が命に背いた罰だ」
「命だって?」
「以前、告げたはずだ。貴様のその体が、一体誰の所有物であるか」
静かな…色をがあるならば、藍色をしているような怒気を放つ彼は、彼女の体を無理矢理、寝台へ引き倒す。反抗する気持ちに任せて、飛び起きようとしたが…両腕も両足も、寝台に縛り付けられているかのように、動かない。
「く…っ、何だこれは……」
必死にもがく彼女の上にのしかかった彼は、細い手首を押さえ付けながら、何時になく強い口調で言う。
「いいか。魔力は、触れているだけで人を死に至らしめる危険性がある。あのように、大量の魔力を使えば、死ぬ可能性も十分あった。貴様は、それを分かっていない」
そうだ。ゼノンの肉体に宿っている魂は元来人の物であったが、高い魔力を備えていた為に、早死にしてしまった。その危険性を、彼は言っている。
「それは…すまない。でも、だからって……うぐ」
反論しようとする彼女の首を、彼の大きな手が締め上げた。苦しいが…死ぬ事も出来ない、絶妙の力加減で。
「いいか。私は、貴様に死んで貰った方が都合が良い。さすれば貴様は、昼も夜も我が妻として、魔界に留まる他ない。だが、我が身に宿る人の魂はそれを良しとしない。貴様に、人としての生を全うさせようと望んでいるからだ。いいか。貴様の先日の行いは、それを踏みにじるものだ」
彼が怒っている事はよく分かった。しかし、彼女にも言い分がある。息も上手く出来ない中、必死で反論した。
「ぼく、は…っ、君がくれた鏡……壊されたの、が、嫌だったんだ。今までずっと、フランツの事が、好きだった癖に、君に可愛いと褒められて舞い上がるくらい、薄情な僕、だけど、そんな僕でも、好きって言ってくれる君の気持ち、踏みにじられたみたいで……っ」
彼女の叫びを聞いた彼は、首から手を離す。一気に呼吸が回復した為、肺が追い付かず…彼女は咳き込んでしまう。そんな彼女の髪を掴んで、彼はこう言う。
「その台詞に免じて、今回は勘弁してやろう。だが、もしもう一度、我が意に反してみろ。二度と魔王の城から出られないようにしてやる」
乱暴に黒い髪を離した彼は、透明の壁をすり抜け、部屋から出ていく。彼女は、その背中に魔王の気配を感じずにはいられなかった。
「すまない」
「謝る事が出来るのであれば、あのような真似は二度とするな」
「すまない。どうしても、許せなかった。君がくれた鏡……あれを割った事が許せなかったんだ」
「あんなもの、幾らでもくれてやる」
「そう言う事じゃ、ないんだが……」
彼女は何かを言い掛けて、途中で、眠ってしまった。よほど負荷が掛かったらしい彼女の体に、回復の魔術を掛けたゼノンは、リリスに後を任せ、エーリヒの追跡へ戻っていく。
翌朝。次の日になっている事に仰天したアロイスは、急いで着替え……部屋を出ようとしたが。
「あいた!」
ドアを開いても、そこに見えない壁があり、外へ出られない。困惑した彼女がその壁を叩いていると、リリスがやって来た。
「おはようございます」
「リリス!一体これは何なんだ」
「ゼノン陛下のご命令です。王妃さまをここから出してはならないと仰せつかっております」
「何故だ?彼は一体、どんなつもりでこんな真似を……」
うろたえる彼女の背後に、ゼノンの気配が現れる。
「我が命に背いた罰だ」
「命だって?」
「以前、告げたはずだ。貴様のその体が、一体誰の所有物であるか」
静かな…色をがあるならば、藍色をしているような怒気を放つ彼は、彼女の体を無理矢理、寝台へ引き倒す。反抗する気持ちに任せて、飛び起きようとしたが…両腕も両足も、寝台に縛り付けられているかのように、動かない。
「く…っ、何だこれは……」
必死にもがく彼女の上にのしかかった彼は、細い手首を押さえ付けながら、何時になく強い口調で言う。
「いいか。魔力は、触れているだけで人を死に至らしめる危険性がある。あのように、大量の魔力を使えば、死ぬ可能性も十分あった。貴様は、それを分かっていない」
そうだ。ゼノンの肉体に宿っている魂は元来人の物であったが、高い魔力を備えていた為に、早死にしてしまった。その危険性を、彼は言っている。
「それは…すまない。でも、だからって……うぐ」
反論しようとする彼女の首を、彼の大きな手が締め上げた。苦しいが…死ぬ事も出来ない、絶妙の力加減で。
「いいか。私は、貴様に死んで貰った方が都合が良い。さすれば貴様は、昼も夜も我が妻として、魔界に留まる他ない。だが、我が身に宿る人の魂はそれを良しとしない。貴様に、人としての生を全うさせようと望んでいるからだ。いいか。貴様の先日の行いは、それを踏みにじるものだ」
彼が怒っている事はよく分かった。しかし、彼女にも言い分がある。息も上手く出来ない中、必死で反論した。
「ぼく、は…っ、君がくれた鏡……壊されたの、が、嫌だったんだ。今までずっと、フランツの事が、好きだった癖に、君に可愛いと褒められて舞い上がるくらい、薄情な僕、だけど、そんな僕でも、好きって言ってくれる君の気持ち、踏みにじられたみたいで……っ」
彼女の叫びを聞いた彼は、首から手を離す。一気に呼吸が回復した為、肺が追い付かず…彼女は咳き込んでしまう。そんな彼女の髪を掴んで、彼はこう言う。
「その台詞に免じて、今回は勘弁してやろう。だが、もしもう一度、我が意に反してみろ。二度と魔王の城から出られないようにしてやる」
乱暴に黒い髪を離した彼は、透明の壁をすり抜け、部屋から出ていく。彼女は、その背中に魔王の気配を感じずにはいられなかった。
