作戦は素早く実行に移された。と言うのも、一番タチの悪い二人…元いじめっ子たちが今日も狩りに来ている。彼らをまず、大人しくさせる事が出来れば、状況は大きく変わるはず。いきなり、顔見知り相手と言うのは、緊張もするが……領民の悩みを解決する為に、アロイス自身が考えた解決策だ。そんな甘い事も言っていられない。
禁猟区域内を歩きながら、彼らの姿を探す。
「あ、いた…」
視界に入るだけのはずだったが、予定を変更。アロイスは、狐の巣に詰めた枯れ草に火を付けようとしている二人に声を掛けた。
「おい、お前ら。何をやっているんだ」
遠くで見ている自警団のメンバーが動揺しているが、狐がいぶり殺される所を見過ごす訳にいかない。アロイスは、記憶にあるヘルセレニアの可愛らしい声色と勇ましい口調を真似ながら、彼らに説教をする。
「そうやって、用もないのに生き物を殺すんじゃない。天寿を全うする事も、他の命が長らえる糧となる事もなかった命が、幾つも冥界に送られて来ると、こっちとそっち……死んでる命と生きてる命のバランスが崩れて、生きてる命が暮らす領域が小さくなるぞ」
これは、アロイスの持論でもハッタリでもない。ヘルセレニアやロサリウスが言っていた、世界の真理である。
「し、しかし……冥界の女王たる貴女さまに取っては、その方がよいのでは?」
「よくない。冥界はあくまでも、魂が一時的に休息する国に他ならない。全ての魂が真価を発揮するのは、この世にあって生きている時なのだから」
これもまた、ヘルセレニアからの受け売りにすぎない。しかし、アロイス自身、強く心を打たれた為か、声に熱意がこもる。それを聞いた二人は瞳に涙を浮かべ、アロイスに頭を下げる。
「お教え、確と心得ました」
「今までの行いを深く反省し、これから先はむやみやたらに命を奪う真似はいたしません」
素直過ぎる反応に面食らうアロイスだったが、反省しているのであれば、特に咎める必要はないだろうと思い、二人に笑い掛けた。
「分かればいいんだよ」
それを見た二人は、本格的に涙を流しながら、家の慣例に従って信奉しているソラウスから彼女たち冥王夫婦に宗旨替えする事を誓う。何故、そんな事まで言うのか理解出来ないアロイスだが、テオドールたちがいい加減離れろと合図を送って来た為、「ありがとうな」と言い置いてから、その場から立ち去る。その為、この後に二人の男が交わした会話を、彼女は知らない。
「素晴らしい。彼女こそ、真の女神だ」
「全くだ」
禁猟区域内を歩きながら、彼らの姿を探す。
「あ、いた…」
視界に入るだけのはずだったが、予定を変更。アロイスは、狐の巣に詰めた枯れ草に火を付けようとしている二人に声を掛けた。
「おい、お前ら。何をやっているんだ」
遠くで見ている自警団のメンバーが動揺しているが、狐がいぶり殺される所を見過ごす訳にいかない。アロイスは、記憶にあるヘルセレニアの可愛らしい声色と勇ましい口調を真似ながら、彼らに説教をする。
「そうやって、用もないのに生き物を殺すんじゃない。天寿を全うする事も、他の命が長らえる糧となる事もなかった命が、幾つも冥界に送られて来ると、こっちとそっち……死んでる命と生きてる命のバランスが崩れて、生きてる命が暮らす領域が小さくなるぞ」
これは、アロイスの持論でもハッタリでもない。ヘルセレニアやロサリウスが言っていた、世界の真理である。
「し、しかし……冥界の女王たる貴女さまに取っては、その方がよいのでは?」
「よくない。冥界はあくまでも、魂が一時的に休息する国に他ならない。全ての魂が真価を発揮するのは、この世にあって生きている時なのだから」
これもまた、ヘルセレニアからの受け売りにすぎない。しかし、アロイス自身、強く心を打たれた為か、声に熱意がこもる。それを聞いた二人は瞳に涙を浮かべ、アロイスに頭を下げる。
「お教え、確と心得ました」
「今までの行いを深く反省し、これから先はむやみやたらに命を奪う真似はいたしません」
素直過ぎる反応に面食らうアロイスだったが、反省しているのであれば、特に咎める必要はないだろうと思い、二人に笑い掛けた。
「分かればいいんだよ」
それを見た二人は、本格的に涙を流しながら、家の慣例に従って信奉しているソラウスから彼女たち冥王夫婦に宗旨替えする事を誓う。何故、そんな事まで言うのか理解出来ないアロイスだが、テオドールたちがいい加減離れろと合図を送って来た為、「ありがとうな」と言い置いてから、その場から立ち去る。その為、この後に二人の男が交わした会話を、彼女は知らない。
「素晴らしい。彼女こそ、真の女神だ」
「全くだ」
