戴冠式は、確かに大変な儀式だった。会場は、城の中央にある決議室なる場所。巨大な円卓に大臣と、儀司と呼ばれるこういった儀式を執り行う際に進行を務める女性がおり、二人を出迎える。誰もが、一目で人ならざる姿をしている為、彼女は少しだけ怯えてしまう。ゼノンが唱えた口上を、アロイスも真似をした後、円卓の奥にある一段高い玉座に並んで腰掛けた。柔らかすぎる椅子に上手く座れないアロイスを、ゼノンがそっと支えた後から儀式が開始した。額に角が生えた可愛いらしい少女が、紫色の布に包まれた何かを運んで来た。儀司の女性がそれを受け取り、円卓の中央にそれを置く。布を広げると、中から可愛らしいティアラが現れる。戴冠式に最も必要な品物だ。
宰相ヴィリバルトを始めとする十三人の大臣たちが順に、結婚を祝福する言葉を述べた後、それぞれが呪文のような物を唱える。すると、ティアラにはめられた黒い石が赤い光を放つ。それが、承認の証らしい。儀司が最後に呪文を唱えると、光は収束し…石は完全に赤い色になった。儀司がそれを確かめると、再び角の美少女が現れる。今度はネックレスや指輪が入った箱を持っていた。
それを合図に、ゼノンは立ち上がる。アロイスも共に、椅子から離れた。二人が見詰め合うと、儀司と少女がティアラと箱をゼノンに差し出す。彼は、少女が捧げた箱に入った装飾品を一つずつ、アロイスに付けていく。多くの目に見詰められる中、ますます女性らしい姿にされるのは、夫婦の寝室を覗かれているような気さえする。そんな事を思う彼女の頭を優しく撫でてから、彼がティアラを黒い髪の上に載せた。立派な女王らしい彼女の姿に、列席した者たち全てから、大きな拍手が起こったが…ヴィリバルトの目は笑っていない。それを見た彼女は、警戒する必要を夫に伝えなくてはと思う。
儀式が完了した後は、ささやかな立食パーティーが行われた。しかし、並ぶ食品はどれも紫や藍色で、人間が食べるそれとは全く違う…グロテスクな形状をしている。慣れないドレス姿で疲れたと言う事もあり、アロイスは吐き気を催す。それに気付いたらしいゼノンは、そっと彼女の腰を支える。
「済まない。妻の気分が優れないらしい。我々は失礼させて貰う。諸君はパーティーを続けてくれて構わない」
それを聞いた大臣たちは、二人に夜の挨拶を述べた。二人は、それに返事をした後…城の地下へ移動する。てっきり寝室か、人間界へ行くと思っていたアロイスは、少し驚く。しかし、そこの美しさにみとれ、他の事など忘れてしまう。
洞窟のようなその場所は、青く輝く湖と満天の星に似た光に覆われた天井の為に、酷く幻想的な雰囲気に満ちていた。
「美しい……」
宰相ヴィリバルトを始めとする十三人の大臣たちが順に、結婚を祝福する言葉を述べた後、それぞれが呪文のような物を唱える。すると、ティアラにはめられた黒い石が赤い光を放つ。それが、承認の証らしい。儀司が最後に呪文を唱えると、光は収束し…石は完全に赤い色になった。儀司がそれを確かめると、再び角の美少女が現れる。今度はネックレスや指輪が入った箱を持っていた。
それを合図に、ゼノンは立ち上がる。アロイスも共に、椅子から離れた。二人が見詰め合うと、儀司と少女がティアラと箱をゼノンに差し出す。彼は、少女が捧げた箱に入った装飾品を一つずつ、アロイスに付けていく。多くの目に見詰められる中、ますます女性らしい姿にされるのは、夫婦の寝室を覗かれているような気さえする。そんな事を思う彼女の頭を優しく撫でてから、彼がティアラを黒い髪の上に載せた。立派な女王らしい彼女の姿に、列席した者たち全てから、大きな拍手が起こったが…ヴィリバルトの目は笑っていない。それを見た彼女は、警戒する必要を夫に伝えなくてはと思う。
儀式が完了した後は、ささやかな立食パーティーが行われた。しかし、並ぶ食品はどれも紫や藍色で、人間が食べるそれとは全く違う…グロテスクな形状をしている。慣れないドレス姿で疲れたと言う事もあり、アロイスは吐き気を催す。それに気付いたらしいゼノンは、そっと彼女の腰を支える。
「済まない。妻の気分が優れないらしい。我々は失礼させて貰う。諸君はパーティーを続けてくれて構わない」
それを聞いた大臣たちは、二人に夜の挨拶を述べた。二人は、それに返事をした後…城の地下へ移動する。てっきり寝室か、人間界へ行くと思っていたアロイスは、少し驚く。しかし、そこの美しさにみとれ、他の事など忘れてしまう。
洞窟のようなその場所は、青く輝く湖と満天の星に似た光に覆われた天井の為に、酷く幻想的な雰囲気に満ちていた。
「美しい……」
