ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

30分後、駅前のマックに集まってくれた二人に私は谷口のことを話した。
唖然としてる表情からして、付き合ってるとは思ってもいなかったみたいで。


「なんでまたそんなのと…」


言いかけた聖がマズそうに口を噤む。


「そうなのね」


真綾は落ち着き払って答えた。


「私も最初はサンダルを返すだけのつもりでいたの。でも、気づくと相手のペースに乗せられてて……」


ファーストキスを奪われた相手だとは言えなかった。
それを言ってしまえば、納得されてしまいそうだったから。


「意外と押しが強い人ってこと?」

「蛍の好みとか」


二人の言葉に戸惑う。

確かに谷口は押しが強い。
でも、きっとそれだけじゃない。


「一緒にいて楽しかったから…かな……」


一番の理由はそれだと思う。
郁也の時とは違って、一緒にいても退屈じゃなかった。


「へぇー、相性いいんだ」


聖の言葉に恥ずかしくなる。


「大事よね。一緒にいても疲れない人って」


真綾がニコッと笑った。



「でもね…」


今日のことを話して聞かせた。

ピッチリとスーツを着込んだ彼が、どう見ても紳士にしか見えなかったこと。
身に付けてるスーツも腕時計も高価そうだったこと。


「これまではヤンキー風だったのに今日は違った。仕事何してるのって聞いたけど教えてくれなかったの。どうでもいいだろって言って……」