ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

U字型に曲げられたワイヤーの先端に刺されたアイスクリームコーンみたいなものを見せられた。


「ポイっつーんだ。このコーンが溶けて破れるまでやれるから。一回200円ね」


誰がやると言った、誰が!


「あのね、私は……!」


「…あれ、あんた下駄は?」


ポイを持ってる方と反対側の指先が足元を指した。


「何処かで無くしたのか?それとも鼻緒でも切れた?」


私の方に目を向ける。


改めて見た顔はヤンキー風だった。

茶髪を逆立てて、薄いブラウンのサングラスを掛けてる。
上に着てるアロハシャツはブルーの生地で、真っ赤なハイビスカスの花がプリントされてる。

私よりも品の無い格好だと思った。
しかも足元はビーサン。


「なんでもいいでしょ!構わないで!」


一々頭にくることしか言わない。
ほっといてと言ってるのに。


「構うなと言われてもそのままじゃな」

「いいのよ!別にこのままでも!」


郁也に投げつけた下駄のことなんて思い出したくもない。
それを思い出せば自分が惨めになるだけだ。



「……何してんのよ」


ヤンキーな男が自分のビーサンを脱ぎ始めた。


「俺のサンダル貸してやる。これでも履かないよりマシだろ」


下駄を脱がそうと跪く男に驚いて、頭の上から怒鳴った。


「やめてってば!ほっといてって言うのに!」


力一杯拒否した。
足を上げられた拍子にバランスを崩して、足先で男の手を蹴飛ばした。