ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「ちょ、ちょっと……」


何言ってんの!?

私が一緒にいたのは金魚すくい屋をしてたヤンキーで、しかもその男は私が金魚すくいで使ったお金で、イヤになるくらいの食べ物や飲み物を注文したんだよ!?



(まさか、谷口が副社長……?)


「俺、さっき間近で副社長の顔見たから間違いないよ。髪の毛立たさせて別人っぽく見せてたけど、あれは絶対に副社長だった」

「まさか……」


ヤンキーだと思ってた男がホンモノの王子様!?

セレブな家庭で生まれ育った生粋のお金持ち!?


「ケイちゃんがどんな関係か知らないけど、チャンスがあれば俺のこと本社に呼び戻すよう言ってくれよ。あの人、一度言ったらテコでも曲げない頑固者らしいし、彼女が言うことなら多少は耳を傾けるかもしれないし」


聞いてると段々イラついてきた。
結局、自分の保身が目当てなんじゃん。



「……ふざけんな」


「へっ?」


話すのをやめてこっちを見る。
この無粋な男に、どうしてこんなふうに傷めつけられなきゃならないんだ。


「いい加減にして!私は彼女なんかじゃない!あんたなんか2年と言わず、一生地方勤務してればいい!二度と顔なんか見たくないし、私の前に現れないでっ!!」


「ケイちゃん!」



後ろを振り向いて走りだした。

郁弥の言うことを信じたくない気持ちで、そこから逃げ出してしまった。