ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

『約束』


自分から小指をだしたのは何歳以来だろう。
きゅっと絡めてきた谷口の小指はあったかくて、胸の内がほっこりとさせられた。





(あーーもうダメだ。私……)


完全にどうかしてる。
頭の中が谷口のことでイッパイになってる。



(これじゃー恋する乙女と一緒じゃん)


谷口に恋なんてあり得ない。
あんなヤンキー男、絶対に趣味じゃない。


違う、違う…と首を横に振りながら思い出さないよう努めた。
送られてきたメールを見ないよう、必死で目線を逸らす。



「…あっ、そうだ。真綾に服のお礼送っとかないと!」


思い立ってLINEを開きメッセージを送る。



『キラキラワンピありがとう。助かった』


おかげで夢物語がいい感じに演出できた。


『なんのなんの。役に立てて良かった!』


ウインクをしてるスタンプが付けられてた。
それに微笑み返してクリーニングを頼みに向かった。



ーーーーーーーーーー

週が明けた月曜日、オフィスへ行くと新商品がドッサリと部署内に届けられてた。



「はぁ……」


今日も地味な仕事が始まるんだと思い知る。
人相手もパソコンもできないんだから仕方ないんけど空しい。


「贅沢言わないでおこう。これもお給料のため!」


一つに括ったストレートヘアをまとめて上げる。
大きめのクリップで留め、手にしたのは馬のモチーフが付いた玩具。