フン…と鼻息を吐いて手を叩いた。
それから、心の中で懸命に願った。



(どうか、このアガリ症が治りますように!それから、素敵な男性と巡り合って、ドラマチックな恋ができますように!!)


願うと言うより念じるみたいな感じに近い。
谷口はそんな私のことを眺めて笑い、可笑しそうに喋った。


「真剣!」


当たり前だ。


「だって神様にはなかなか会えないもん!」


神社なんて年始にお参りする程度。
会えたらあれこれ願っておかないと、いつ聞いてもらえるかわからない。


「確かにそうだけど、ホタルのは殺気がこもってる」


ギクッとするような言葉を平気で言う。
この男は何かにつけてそんな感じ。


「い…いいでしょ、自分のことなんだから!」


祈るだけはタダ。
だって、そうでもしないと一生縁が無さそう。


社殿に背を向けて帰り始めて、鳥居の向こう側に広がる海に気づいた。



「わぁ…キレイ…」


日がまだ高いせいか、海はキレイなマリンブルーに染まってる。
水天宮の鳥居は竜宮城のような雰囲気で建てられていて、白い壁の上に朱色のお堂が乗っかってる。



(やっぱりおとぎ話の続きなのかな)


谷口みたいによく知らない男とデートみたいなことをして過ごした。
これがおとぎ話でなかったら一体何だと言うんだ。



「ホタル」


私の名前を勝手に呼び変えてるし。



「ほら」