ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「デパートで買ったって言ってたやつ?」

「あらら、残念」


「そうなのよ。あれだけは惜しいことした」


大好きな桜色の鼻緒をした下駄だった。
本当ならあの鼻緒に似合う浴衣を見つけて買うつもりだったけど。


「彼氏だと思ってた男には両天秤にかけられ、金魚すくい屋の男には付きまとわれて……」


散々な目に遭った…と漏らした。
すると、二人は顔を見合わせ……


「今、聞きづてならないこと言った?」

「うん、男に付きまとわれたとか」


アイスコーヒーに付いてきたクッキーを囓ろうとしてた私を振り返る。
ギクッとするような視線を向けて、二人が前のめりになって聞いてきた。



「どういうオチ?」

「ゆっくり話を聞こうか」


「えっ?えーと…」


やれ困った。
墓穴を掘ってしまった。


「あのね、実は……」


遡ること20時間近く前にあった出来事をかいつまんで教える。
二人は唖然とした表情で、私の話に聞き入っていた。




「…つまり、そのヤンキー男に見初められたってこと?」

「そんでもって連絡先まで交換してる?」


「…や、だから、それは断りきれずに強引に……」



「…ウソだ」

トロピカルジュースのグラスを置いて聖が囁いた。


「うん。慎重派の蛍が初対面の人に教えるはずもん。変!」


真綾までが疑う。


「そ、それは、相手がヤバい人かもしれないと思ってぇ」