ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

どの店もボランティアだから、儲けはいらない。
いい材料を使って美味しいものを出して喜んでもらえればいい。

それ以外に目的はない。
だから、いい思い出を作って帰れと言ったんだ。


(あの人って、一体何の仕事してるんだろう)


的屋をやってるからヤバい人なのかと思ってたけど、もしかしたら一般人なんだろうか。
私よりも年上には見えたけど、どう見ても若いはず。


(責任者を任されるということは町の権力者か何か?ひょっとしたら、あの神社の関係者とか?)



わからない。ホントに。

そんな男に彼女にされそうになって、挙げ句ファーストキスまで奪われたとはーーー。




(うわぁぁぁっ!)


何度考えてもハズい!
恥ずかしいったらない。



(やだもう。絶対に連絡なんてしないんだからっ!)



散々後悔しながら出かけた。


二人の友人は、私の話を聞くなり呆れて怒った。




「二股!?」

「恐ろしく大胆ね」


二股と言い切ったのは、横山 聖(よこやま ひじり)
大胆と言ったのが、轟 真綾(とどろき まあや)

二人ともオフィスの同期。
聖は経理部で働き、真綾は社長秘書をしている。


「お陰で大切な下駄を無くしちゃった。あまりに頭にきすぎて、郁也の顔めがけて投げつけてしまったから」


ズズッ…とストローでコーヒーを飲んだ。
アイスでもホットでも、ブラックのままがお気に入り。