ぼぉ〜としてる間にスマホをカゴから抜き取られ、ロックを解除しろと言われた。
それから、アドレスと番号を登録されたんだ。




(削除しよう!削除!)


咄嗟に判断して起き上がった。
手にしたスマホをいじり、登録画面を見て悩む。



(……これ、消しても言いがかりつけてこないよね?)


消した後も延々連絡とかこないよね?


「大丈夫よね…」と口にする。
震えてるような気がするのは、私の気のせいであって欲しい。


(い…一応、真綾たちに相談してからにしよう。削除なんていつでもできるんだし…)



自分の不安を静めて下へ降りた。
キッチンのテーブルには、昨夜の露店料理が並んでいる。



「おはよう。ケイ」


母がニコニコしてる。


「はよ…」


髪を掻き上げながら、いつも座る右奥の椅子を引いた。


「これ、朝ご飯なの?」


見たくもない焼きそばとお好み焼き。
ウプッと胃酸が上がってきそうになりながら、母の顔を確かめた。



「そうよ。あんたのお土産でしょ」


違う。これは昨夜、あのヤンキー男に持たされたんだ。



(いらない…と言ったのに!)



昨夜、テーブルに並んだ料理を食べきれないと言ったら、あいつは店主を呼び出してきてーーー


『持ち帰れるように包んでやって』


誰もそうしてくれなんて頼んでもないのに、わざわざ容器に詰め替えてもらった。
困ったように袋を眺めてたら、ニッとして笑われた。