ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「男に騙されてたのか」


それを口にするな。


「それで何で裸足?」


それを聞くのか。




「………投げたの」


ボソッと口にしたら「はぁ?」と耳を寄せる。
ウザいなと思いながらも、もう一度ハッキリ言ってやった。


「投げたの!相手の男の顔にぶつけてやった!」


ふざけんなと言いながらの行動。
我ながら怒りが抑えきれなかった。



「怖ぇっ!」


からから笑い飛ばしてる。
この男にしてみたら痛くも痒くもない話。



「ほっといて!」


だから最初から知らん顔をしておいてと言ったのに。

郁也の裏切り行為に対する怒りと自分のバカバカしさに浸りたかっただけなのに。


ブスッとタコ焼きに爪楊枝を立てた。
思い出すとイライラしてきて、そのまま何度も突き刺してしまった。



「もう止めろよ」


楊枝を握ってる手を止められた。
浅黒く日焼けした手の主を眺めて、勝手でしょう!と言いたくなった。


「食べ物を粗末にするな」


またしても尤もな意見を言われる。
ムッとしてる私に近づき、ポン!と肩に手を置いた。


「変な男の正体がバレて良かったじゃねぇか。おかげで旨い物と出会えた」

「それは、あなたがここに連れて来たからで…」


私自身の意思じゃない。
全部この男の思惑だ。


「俺は祭りに来てる客が楽しんでくれればそれでいいんだ。つまらない思い出を残して帰って欲しくないし、あんただってそのつもりでここへ来たんだろう?だったらそれなりに楽しめよ」