まるでホントの子供のように拗ねた。
大輔さんの中にある会長への信頼感が、そう思わせてるんだろうと思う。


「ケイは先週、商開部に抜擢されたんだ。兄貴得意のサプライズ異動だったもんだから怖気づいてる」


大輔さんの話を聞いて、会長はまたか…と呆れた。


「あいつは将棋の駒のように人を動かすのが好きだからな。でも、心配しなくても大丈夫だよ。あそこの部署にはただの玩具好きしかいない。ほぼ遊びながらアイデアを練り出してるから気張らなくてもいい」


気楽におやり…と言われた。
そう言えば会議と言いながらも、実際にはテストプレイしかしてなかった気がする。



「兄貴はケイにデザインをして欲しいようなことも言ってた」

「ああ、うちの玩具は野暮ったいからな」


笑いながらそう評した。
自社製品を会長自らが貶してもいいんだろうか。


「大人も子供も喜びそうなモノを作りだして下さい。これはうちのコンセプトでもあるから」


気負わないことが良いモノ作りに繋がる…と言ってくれた。

肩に力を入れてばかりいた私は、ほっ…と力を抜くことも大切なんだと知った。


二人からの昼食の誘いを断って家に送ってもらった。

私が男性に送り届けられたのは初めてだったもんだから、両親もおばあちゃんも驚いて腰が抜けるかと思ったそうだ。



「蛍のこと、お願いします」