宿泊先のホテルのラウンジで会った人達は、長年連れ添った夫婦のように仲が良かった。
大輔さんの目が二重なのは、お母さん譲りなんだと知った。



「初めまして」


軽くカールした髪の毛を揺らして挨拶された。
お母さんは人当たりが良さそうで、優しさが前面に溢れてる人だった。


「轟です。大がお世話になります」


会長は厳しそうに見えた。
社長と同じく、隙の無い人のように思えたけど……



「この子がお前の選んだ子か」


ポンポンと背中を叩く姿は父親そのものだった。
叩かれてる大輔さんも本当の息子みたいに見えた。


「お粗末な息子だけどよろしく頼むね」

「気が強いけど負けないで」


それぞれからエールを頂いて頷いた。
答えようと口を開いたけど、舌が空回りしてばかりで、結局吃った。


「ふふ…ふつ、つか者、ですが…、おお、おねが…い、いた…致し、ます……」



(えーーん!やっぱりダメーー!)


恥ずかしくて死にそうだというのはこういう状況のことだろう。
声に出してはいないけど、二人とも呆れてるに違いない。




「可愛いお嬢さんね」

「口達者な大と足して二で割れば丁度いい」


声を出して笑われたのは、そういう冗談を言った時だけだった。
口達者だと称された大輔さんは、仕様がなさそうに呟いた。


「一言余計だよ」