深いことは何も考えてなかった。
ただ、この人の側で自分が少しずつ変わっていけたらいいと願う。


「だったら行こう」


手を取り立ち上がる人に、何処へ?と聞いた。


「拓磨さんと母さんに会わせる」

「えっ!?」


「今頃はまだ宿泊先のホテルにいるはずだ」

「ちょ、ちょっと、待って!」


それってどういう意味!?
彼女として紹介するってこと!?


「結婚前提に付き合ってると言う。母さんはともかく、拓磨さんはその辺のケジメには煩い人なんだ」


『連れてくる女性は選べ。結婚しようと思わない女は家の中に連れ込むな』


「拓磨さんは厳しくて、その節度は守れと言った。だから俺が轟家に連れてきた女はケイ、お前が初めてだ」


キャリコを見に来いと言ったのはそういう意味も含まれてたのか。
それであの家政婦さんは、チラッと伺うような目線で私のことを見てたんだ。


改めて知って冷や汗が流れた。

こんな自分が轟家の一員になろうとしてる……。



「わ…たしで、い…いの…?」


この先、もっとステキな女性と出会えるかもしれないのに?


「ケイがいいんだ。俺のことを全部見せれる」


クソ親父のことを話したのもケイだけだと言った。
私はそんな彼の信頼をずっと大切にしていきたいだけ……。


「よ、よろしく……おお、お願い……します……」


緊張して吃った。