ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「この手は私の宝物なの。だから、絶対にそんなことしない……」


どんなことも丸ごと引き受けてくれると言った。
だから、私も同じ気持ちでいよう。


「大輔さんは優し過ぎるの。お父さんのことも心の底ではきっと愛してたと思うし、愛してたからこそ憎んだ。愛してるから許せない。
そんな感情があって当たり前だと思う。……でも、私はそんな大輔さんが好き。弱さも見せずに強がってばかりいるけど……」


ポトン…と一粒の涙が手の上に落ちた。
真っ赤な目をしてる彼の唇が小刻みに震えていた。


「私の前では強がらなくてもいいよ。私もアガッてばかりで、吃ってばかりいるから……」


全然似てないようだけど似てるね。
手の届かない王子様だと思ってたけど、そうじゃなかったんだ。


「私の前では、ただの『大輔さん』でいてくれるんでしょ?」


なんとか笑って言った。
泣いてる彼をこれ以上泣かさないようにしようと思ったからなんだけど……



「ケイっ!」


抱き付かれて激しく嗚咽されてしまった。
こんなに泣き崩れるとは思いもしなくて、スゴく驚いた。


ヨシヨシ…と子供のように宥めた。
こんな風に弱さを見せてくれるなんて思いがけずに背中を擦り続けた。



「心の拠り所になって欲しい……」と、泣き終わった彼が言った。

自分のこともお願いしようと思ってたから二つ返事で引き受けた。



「うん…いいよ」