「家を出ようと何度も頼んだ。でも、母親はその度に断るんだ。『お父さんは病気なの。捨ててはいけない』って。…バカみたいだろう。結局、向こうから逃げ出したのに…」
捜索願いを出したのは、その頃だと教えてくれた。
後になってお母さんが再婚したから、連絡先は自分の携帯番号に変更したんだそうだ。
借金は当時の社長だった会長が事情を知り、お給料を弾んでくれたから返済できたと語った。
それも含めて、全部感謝してる…と話した。
「家族に迷惑ばかりをかけ続けた親父を俺はずっと恨んでた。ろくに働きもしないで飲んでばかりいるバカ者を憎んでた。
その恨み辛みが重なり過ぎてたから、自分ももしかしたら同じことを女にするんじゃないかと思うと……怖かった……」
『いろんなのに手出してたけど…』
社長の言葉が頭の隅を掠めた。
浅い付き合いばかりをしてきたのは、そういう恐ろしさから逃れる為だったんだろうか。
「昨夜ケイを抱きながら思った。こいつだけは絶対に大事にしよう。自分の弱さに負けず、絶対に手を上げたりしない…って」
ぎゅっと握りしめてる手の上に自分の手を重ねた。
ゴツゴツと尖る関節の骨を、上からそっ…と撫でてあげた。
「……大丈夫。この手は人を殴ったりなんかしないよ……」
さっきの荒っぽいキスは、そんな怖さの裏返しだったんだろうか。
力強いけど大切にしてくれる。
温もりもくれるし守ってもくれる人なのに。
捜索願いを出したのは、その頃だと教えてくれた。
後になってお母さんが再婚したから、連絡先は自分の携帯番号に変更したんだそうだ。
借金は当時の社長だった会長が事情を知り、お給料を弾んでくれたから返済できたと語った。
それも含めて、全部感謝してる…と話した。
「家族に迷惑ばかりをかけ続けた親父を俺はずっと恨んでた。ろくに働きもしないで飲んでばかりいるバカ者を憎んでた。
その恨み辛みが重なり過ぎてたから、自分ももしかしたら同じことを女にするんじゃないかと思うと……怖かった……」
『いろんなのに手出してたけど…』
社長の言葉が頭の隅を掠めた。
浅い付き合いばかりをしてきたのは、そういう恐ろしさから逃れる為だったんだろうか。
「昨夜ケイを抱きながら思った。こいつだけは絶対に大事にしよう。自分の弱さに負けず、絶対に手を上げたりしない…って」
ぎゅっと握りしめてる手の上に自分の手を重ねた。
ゴツゴツと尖る関節の骨を、上からそっ…と撫でてあげた。
「……大丈夫。この手は人を殴ったりなんかしないよ……」
さっきの荒っぽいキスは、そんな怖さの裏返しだったんだろうか。
力強いけど大切にしてくれる。
温もりもくれるし守ってもくれる人なのに。

