ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「あ…あの……私……」


初めてなんです…とは、言いたくも言えない状況にある。
覗き込まれる表情にビクつきながら、困ったように目線を逸らせて黙り込んだ。



「くくく…」


可笑しそうに苦笑された。


「だ、大輔さん……?」


お腹を抱えて笑いだしてる。


「嘘だって。冗談!」

「へっ?」

「まだ鈴木さんいるし、こんな明るい時間から迫ったりしねぇって」


私を試してただけなのか。
それともどういう反応をするか確かめてみただけ?


「初めてはここじゃない方がいいだろ?」


さり気なく聞かれ、「うん…」と答えてしまった。



「あっ…」


しまった。
経験ないってバレちゃった。



「やっぱか〜〜」



ヤダもう。
何度目かってくらいに顔が熱い。
こんな経験、あと何回くらいすればアガらなくなるんだろう。



「心配しなくてもいいから」


スルッと背中から腕を巻き付けられた。


「タップリ可愛がってからにしてやる」


「あ……」


手が胸触ってる!?


「きゃっ…!」


「その声、最高にそそるんだよな」


耳元で囁く声にビクつく。
これまで見せなかったオオカミらしい素顔に改めてときめいた。



(ギャ…ギャップ萌え……)


ヤンキーでも副社長でもない一人の男としての顔。

夜空に開く花火のように、恋は燃え上がっていけるだろうか。