ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「俺が飼ってるキャリコみたいに真っ赤な顔してる」


唇の上に彼のが重なった。
軽く何度か触れた後、薄目を開けたままゆっくりと離れてく。



「この後、俺ん家に行こう」


思いがけない言葉に驚いて、パクパクと口を開閉した。


「面白いヤツ!」


クシャクシャと髪の毛を触る。


「あ、ああ、あのぉ……」


ホラもう、吃りグセが出たじゃないの。


「大丈夫。今日、誰も家にいないから」


「えっ……」


あ、あの、それはもっとヤバい気がするけどぉ!?


あはは…と笑って店の中に入った。
その後、中で何を話したかなんて、全く覚えてもないまま店を出ていた。



轟家に着いたのは夕方の4時頃だったと思う。
白亜の豪邸に作られた駐車場のガレージには車が一台もなくて、確かに誰もいない雰囲気が漂ってた。



「いきなり家族に会わせたら吃るだろ」


(そりゃあ確かにそうですけど!?)


狼狽えながら手を握られてドアをくぐる。
出迎えに来た家政婦さんに、「構わなくていい」と轟さんは言った。


「皆はまだなんだろ?」


靴を脱いで上がると、家政婦さんに尋ねた。


「はい。旦那様と奥様はレセプション先のホテルにお泊まりになるそうです。祐輔様たちは、お食事を済ませて帰られるとお電話がありました」


「ふぅん」


ふぅんって何!?
この家にいるのは、私と貴方とこの家政婦さんだけ!?