ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「拓磨さんといい兄貴といい、一々カッコいいんだ、轟家の人間は」


やりきれないように笑った。
それから少し真面目な表情になって、こう言葉を付け足した。


「ボランティアの責任者を始めたのも、最初は視野を広げる為だった。学生時代の友人を誘ってやれば、ガキん頃みたいに楽しくできるかなぁくらいの感覚だった。
でも、やり始めたら面白くてさ。いろんな業態の人とも仲良くなるし、ケイみたいな女も見つけるし」


「わ…私……?」


見つけられたの?
あの寿神社の夜に?


「あの祭りでケイを見つけて良かったと思う。ド派手な浴衣で別人みたいに着飾ってたけど」


「あ…あの……」


あの日は別の人の為に着飾ってただけで、轟さんが会場にいることも知らなかったんだけど?


「あれが俺たちの始まりだとしたら笑えるよな。なんたって足蹴りされたからな、俺」


「そ、それを言うなら私だって……」


ファーストキスは奪われるし、イヤになるほどの食べ物は目の前に置かれるし……。



「ん?」


言葉の続きを聞きたいように首を傾げる。
でも、それを口にするのは、さすがに恥ずかしくなってしまい。


「い…いろいろあったのよ。私の方にも」


顔が熱くなってきた。
またしても赤くなってる。


「健太朗じゃねぇけど、可愛いよな」


顔を寄せてくる人がニヤッと微笑む。