ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に

「う…ん…」


頷きながら答えた。
私はいつの間にかこの人の魔法にかけられてるような気がする。



「だけど……私は…何もしてやれてない……」


彼女として癒すこともしてない。
甘えさせてもらうことばかりで、甘えてももらえない。
一方的すぎる関係の中で、バランスがまるで取れてない。


「俺を好きだって言ったろ。それだけでいいんだって」

「でも……!」


反論しようとした。
だけど、唇に指を押し当てられた。


「それが一番欲しいと思うことなんだ。それ以外には望むものなんて何もねぇ」


口角を上げて微笑む。
その顔にキュンとして、同時に緊張の糸が解れた。



「しょ…商開部でね……」


意見を求められても答えれなくて困ったことを伝えた。
この1週間、緊張ばかりしてたことを話した。


「それなのに、ここに連れて来られるし……」


オフィスの人達とは違う人種の人もいるんだとはわかった。でも、やっぱり緊張する場面であることは違いない。


「純香さんにも教えられたの。大輔さんがホントは臨床心理士になりたかったんだ…ってこと……」


子供の頃の夢を知ってるのは幼馴染だからだとしても、養子になることを決めた話をした時に、そのことも聞かせておいて欲しかった。


「あー、そういうのを考えてた時期もあったなぁ」


懐かしそうに振り返って、私の肩を抱き寄せる。